2020 SUMMER 太古の生きもの館だより

恐竜の病気

丹波篠山市 化石保護技術員 奥岸明彦

今回は恐竜の病気について少しばかりお話しようと思います。

恐竜がどんな病気に罹っていたかというのを知るには、骨を調べるしかありません。何故ならば、ほぼ骨化石しか発見されていないからです。従って骨に影響の出ない病気(風邪や内臓系の疾病など)に罹っていたのかどうかは分かりません。個人的には現生の爬虫類だって神経症や皮膚病、果ては尿管結石だって患うのだから恐竜だって色んな病気に罹っていただろうと思いますが、何も証拠が無いので妄想に過ぎません。では、確実に証拠が有る骨に影響の出る病気はというとまずは骨折です。骨折し、治癒した痕跡の有る化石が幾つも発見されています。その他には腫瘍や感染症である骨髄炎などです。変わったところではティラノサウルスが痛風持ちだった可能性が…当たり前の事ですが過度な飲酒とかではなく、食性と尿酸酸化酵素を持たないためだと思われます。簡単に言うと、肉ばっかり食べて尿酸がどんどん増えて、おしっこで排出するけれど間に合わない上に、身体の中で分解する事も出来ないから痛風一直線という事です。現在の人であれば病気や怪我に対して様々な治療薬や、対処方法の知識も有りますが、恐竜はそういう訳にはいきません。純粋に自分自身の自然治癒能力のみに頼っていたのです。それだけに厳しい自然の中で生き残るのは大変な事だったでしょう。

ここ最近、新型コロナウイルスが世界中でとても大きな問題になっています。予防・治療に関して手探りの状態の中で、ワクチンや治療薬の研究開発、最前線で懸命に医療に従事しておられる方々に感謝と尊敬の念を禁じ得ません。

一日でも早い事態の終息を切に願います。

※太古の生きもの館は、兵庫県立丹波並木道中央公園内にあります。