2018 AUTUMN 太古の生きもの館だより

「剖出」って何だろう                  篠山市 化石保護技術員  奥岸 明彦

前回は『発掘』についてのお話だったので、今回はその次の作業である『剖出』についてお話ししようと思います。

発掘された化石は、殆どの場合『母岩(化石を含む岩のかたまり)』からほんの少し見えているだけで、全体を見る事は出来ません。そのままでは研究する事もままならないので、母岩から化石だけを取り出す『剖出(化石クリーニング)』という作業をします。

具体的な方法は、まず母岩と化石の状況を観察します。「どんな感じで埋まっているか」「どういう方法なら化石を痛めずに取り出せるか」「周囲に別の化石も含まれていないか」など、様々な事を検討しながら剖出の方針を決定します。

次に行うのは写真撮影です。剖出前の初期状態→剖出作業の進捗状況(複数日に亘る場合は日数分)→剖出が終了して保存処理まで完了した状態と、小まめに撮影して記録していきます。そうして事前準備が出来ればいよいよ剖出作業開始です。主な作業は化石の周りに有る鉱物を削り取って化石だけにするのですが、これが中々簡単にはいきません。実体顕微鏡を覗きながら、エアチゼルという空気の力を利用して前後する針のついた器具で少しずつ削るのですが、化石が脆くて周りの母岩(鉱物)と一緒に削れそうになったり、欠けてしまいそうになったりします。その他にも敢えて全ての化石を取り出してバラバラにせず、母岩を最小限残して繋がったままにする事で、骨同士の関係が分かる様にしたりもします。そうやって取り出した化石は、壊れ難い様に薬品を塗るなどの保存処理をします。全てが完了すると、展示して皆さんに見て頂いたり、研究用の資料として調査したり、という事になります。

化石を発見し、発掘するのも大変ですが、実はその後も大変なのです。